今月は、医療の検査では欠かせない存在となっている「エックス線検査」の是非について考えたいと思います。
今回ご紹介しますのは、医療被曝問題や化学物質の問題などに取り組まれている「高木学校」から発行されています「受ける?受けない?エックス線CT検査―医療被ばくのリスク」という書籍の概容です。
今日では、X線なしには医療が成り立たないと言われるほど医学と密接に結びついており、私たちは学校や職場の検診、人間ドッグ、病気の診断などで、たびたびX線検査を受けています。もしX線が生物を傷つけるという性質がなければ、私たちは健康面で多大な恩恵を受けることになります。しかし、公衆一般の年間限度線量(1ミリシーベルト)でも、発ガンの可能性があるという研究が次々と発表されています。
2004年、英国の医学雑誌「ランセット」に発表された論文で、日本は世界で群を抜いて医療被曝が多いと指摘されています。なぜ、日本の医療被曝がそんなに多いのでしょう。それは無駄な検査が多いからです。
日本では多くの学校や職場で健康診断が行われ、「健康診断は病気の早期発見のために有意義」と多くの人が信じています。しかし米国とカナダの共同研究で「健康診断の有用性」が検討され、現在の日本で行われている健康診断のほとんどの項目が「無意味」と判定しています。特に結核を見つけるためのX線検査は、検討にも値しないとしています。
また、健康な人が受ける全身のCT検査は、受ける恩恵よりも被爆のリスクが高く、乳ガン発見のためのマンモグラフィも、若い女性の場合はリスクが上回る危険性が指摘されています。
特にCT検査が急速に増加していますが、CTの線量は他の検査に比較して格段に高く、被爆による発ガンのリスクが心配されます。 (CTによる検査は胸部単純撮影の200~400倍)
職業的に放射線を扱う人は線量計をつけて作業し、線量限度は1年間で50ミリシーベルトを越えないと決められています。公衆一般については「年間で1ミリシーベルトを超えない」と定められています。
これは、X線の被爆について、ある線量以下では発ガンなどの影響がなく、ある線量を越すと影響がでてくるとされているからで、これを「しきい値」と言います。X線検査の時に「低線量ですから安全です。安心して検査を受けて下さい。」というのはこの「しきい値あり」を前提としています。
医療機関でこのような説明を行うのは「患者が放射線の害を心配するあまり必要な検査を渋るから」と言いますが、実は社会、経済的要素からです。
もし「しきい値」がないということにければ、線量に応じてリスクが生じることになり、放射線作業を行う人へのリスクを0に近づける義務が生じ、これには莫大な費用がかかりますが、実は、米国科学アカデミーも国際放射線防護委員会も、「しきい値なし」の立場をとっています。もし、「とりあえず」とか「念のため」とか、「ガン検診のため」、「CTを撮っておきましょう」などと言われたら要注意です。
freedom / 2010年7月25日