五月十七日付けの毎日新聞のコラムで、鈴木幸一氏(インターネット・イニシアティブ社長)は「中国では大気汚染ほど話題にはならないが、最も深刻な課題は水不足である」と述べ、「三十数年も前から指摘されていた砂漠化は対策が追いつかず広がるばかり、その原因として、環境への配慮を欠いた経済の急拡大、温暖化をはじめとする地球環境の変化などが指摘されているが、中国の環境問題は具体的な数値を把握しにくいだけに、周辺諸国にとっても怖い話である」としている。
高度成長期の日本も、環境の悪化はそのままにして経済成長に突き進み、住民の健康が危惧されるに至り、ようやく環境対策に乗り出し、厳しい公害規制を実施、今では世界でも有数の環境対策技術を手に入れることが出来た。北九州市など環境先進都市として、今では世界各国から環境改善指導に招かれるようになっている。
高度成長を続ける中国も日本と同様、環境対策にハンドルを切る時期にさしかかっていると思われるが、どうだろう。なにしろ日本の十倍を超える人口を抱える中国は、環境破壊のスケールも桁違いに大きいことだろうし、国民の意識改革も容易なことではあるまい。
入手する情報はマスコミ報道だけというわれわれ庶民には、この先どうなることか分からず、不安におののくだけである。
新聞記事によれば、雲南省昆明市では石油化学工場の建設計画に毒性のあるパラキシンの生産が含まれているとして、住民千人ばかりが計画の撤回を求めて反対運動をしているという。また遼寧省大連や浙江省寧波などでも、同様な抗議デモが起きているとも伝えられている。
北京の大気汚染が騒がれ、PM2.5の飛来数値が毎日のニュースで伝えられる昨今、現地の人々の健康が憂慮されていたが、さらに飲料水が不足するというのでは、生活の基盤が失われることになる。
とすれば中国社会の大混乱を招く事になり、難民の流出など周辺諸国への影響は計り知れない。無力なわれわれは海水の淡水化技術や植林技術の飛躍的進歩などを期待し、ひたすら事態の好転を祈る他はないのであろう。
(平成二十五年五月十七日)