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「資本主義の現状と今後への警告」

今朝の毎日新聞の社説では「ピケティ現象」と題してフランスの経済学者トマ・ピケティ氏の著書「二十一世紀の資本」は世界で引っ張りだこになっていることを紹介している。その記事の中で、最近私の気にかかっていた問題に関連することがあったので、書き留めておく。

① 英仏米、日本など二十カ国の過去百年以上にわたる経済統計を解析。土地や株などの資産を活用して得られる利益の伸びは、人々が労働で手にする所得の伸びや国の成長率を常に上回ることを明らかにした。

② 「資本主義のもとでは資産を持つ人がますます富み、持たない人々との格差が広がり続ける。富も貧困も世襲されて行く。」と分析している。 「資本主義の疲労」とも言うべき現状と今後への警告だ。

③ 格差への抗議活動「ウォール街を占拠せよ」が起きた米国。若者の高い失業率などで不満がくすぶり極右勢力が伸びる欧州。そうした下地もあり、ピケティ氏の問題提起に呼応するような動きが、昨年初めから欧米で広がった。

④ スイスで昨年一月に開かれた「世界経済フォーラム」の総会(ダボス会議)の主要議題は「所得格差の是正」「貧困の解消」だった。格差が、持続的な経済成長や企業の発展にとって大きな足枷になるという認識だ。世界の政治、経済のリーダーたち、つまり持てる人々がこの問題を重視した意味は小さくない。

⑤ 昨秋の国連通貨基金・世界銀行の年次総会でも「所得格差と機会の不平等」が議題となった。
意外な人も口を開いた。歴史的な金融緩和策で、世界に金あまり状況を生み出している米連邦準備制度理事会のイエレン議長である。昨年の講演で「富裕層の所得や富が著しく増大する一方、大半の所得層では生活水準が低迷している。これは明白だ。」と指摘し、「こうした傾向が、わが国の歴史に根ざした価値観、なかでも米国民が伝統的に重きを置いてきた『機会の平等』に照らしてどうなのか。」と話した。金融政策も、格差問題を避けて通れなくなっているのだ。

⑥ 日本ではどうだろう。非正規雇用やシングルマザーの貧困などが取り上げられても、社会を巻き込むうねりや問題提起にはなっていない。政治、経済の指導者が正面から向き合って、何かを語ることもない。逆に現在進行中の経済政策は「持てる者に向けた政策こそが、すべての問題を解消する」といった考えに基づいている。

以上いささか引用が長くなったが、私の頭の中で一昨年来モヤモヤしたものの正体を見せつけられた思いがしたので敢えて書き留めた。

この社説を見て私の感じたことを整理してみる。

一、生涯一サラリーマンとして過ごしてきた私は、資本とか資本主義などと言う言葉には縁がないものと思ってきたからピンとこない。

そこで「資本主義」とは何かその基礎的知識を広辞苑に尋ねてみる。
そこでは、「封建制下に現れ、産業革命によって確立した生産様式。商品生産が支配的な生産形態となっており、生産手段を所有する資本家階級が、自己の労働力以外に売るものを持たない労働者階級から労働力を商品として買い、それを使用して生産した余剰価値を利益として手に入れる経済体制」と定義している。

二、だから資本家と労働者とは、もともと所有する資産に格差があるもので、格差の増大が問題とされる原因は、単純に言えば生産によって得た利益の配分について、労働者が提供した労働力の対価と、資本家が提供した生産手段の対価に対して、不公平な配分が行われた結果にあるということになる。

三、その配分方式については労使が対等の立場で話し合うことによって決定すべきことであり、そのために労働組合の存在と団体交渉権が法律によって保証されている。
従って本来は団体交渉により妥当な利益配分が行われ、格差の不当な増大は生じない筈である。

四、しかし株式の売買による収益を目的とする株主は企業との関係は自由であるが、現在の職場を失えば失業しなければならない労働者は、企業の存立を危うくする行動は自ら制約されることになる。
また日本では高度経済成長時代から、労働組合に加盟しない労働者いわゆる非組合員が増加し、労働組合は往年の力を失い弱体化している。

五、さらに昭和六十年「労働者派遣法」が制定され、最近問題となっている身分不安定な派遣労働者が世に溢れることとなり、労働者の力は一段と弱くなってしまった。

六、かつては経済不況となれば、政府は財政投融資による公共事業で切り抜けてきたものであるが、先進国中最悪の財政状態で、その立て直しが世界的公約ともなっている今日は、その余裕もない。

七、今日の財政赤字を作ったのは、歴代内閣が選挙の度に世論に迎合する公約を乱発した結果であり、その世論を醸成してきたのは新聞社を始めとする無責任なマスコミであった。

八、しかし今更過去の経緯を悔やんでも始まらない。
日本の若者が不当な格差に対する不満や怒りを、デモなど集団的行動で意思表示しないからといって、現状に満足しているわけでは無い。
彼らが大人しくしているのは、一部は親の脛囓りをしていることと、基本的には事を荒立てても良い成果は得られないと言う諦めによるものと思われる。

だがこの現状を放置していたら、わが国の少子高齢化が急速に進み、日本の経済は衰退していく事は明らかである。

九、とにかく一日も早く政治家や大企業の経営者など政財界の指導者がこの現状の重大性を認識し、その解決に乗り出すことが必要である。
昨年末、安倍総理も経済回復の成果を従業員の賃上げに反映させるよう経済界に要望し、経団連会長も賛意を表したと伝えられていたようだが、それを以て総理が安心してはならない。全国労働者の九十%以上は中小企業の従業員であり、中小企業は未だにデフレの中でもがいていることを忘れてはならない。

十、安倍総理よ、今こそ国会議員の定数削減・歳費の一部返上・高額所得者に対する累進課税の引き上げなどを実施し、その財源をもって、派遣労働者を全員正規社員にするなど、具体的対策を実行してもらいたい。
安倍総理よ、名宰相として歴史に名を刻む意志をお持ちなら、安倍ノミックス第三の矢は、まず国会議員の定数削減と歳費の一割返上とされることを提言する。

(平成二十七年 一月三日)

ramtha / 2015年6月13日