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「アマゾンと地方都市本屋の消滅」

足腰が痛くなるまでは時折飯塚本町の紀伊国屋書店まで出かけて新刊書を眺めるのが、無趣味が私の唯一の楽しみであった。しかし八十歳を超えてからは、出かけるのが次第に億劫になり、新聞広告で目に留まった本を電話で注文し、在庫の有無を確かめて、在庫がなければ取り寄せてもらうこととした。しかし、それには数日あるいは数週間も要することがあり、もどかしい思いをすることもしばしばあった。

飯塚市のような地方都市では、漫画や週刊誌以外のまともな書籍を購入する顧客は少なく、注文書の取り寄せも毎月の配本と一緒にしていることと思われたが、特別に送料を負担しない身としては、致し方ない事と諦めていた。

ところが昨年十二月、家内が飯塚市内に出かけるついでに紀伊国屋書店へ立ち寄ってもらったところ、休業日でもないのに閉店していたという。念のため電話してみたら「この電話は使われていません」という。飯塚本町商店街の衰退と共に廃業したものと思われた。

どうしたものかと思案していたら息子がインターネットで取り寄せてやるという。依頼した翌々日には注文した本が送られてきた。送り主はAmazon co.jpとある。送り状の説明書で、物品の配送業者である事を時代遅れの私は初めて知った。

なお驚いたのは、配送料・手数料が0円である。考えてみれば、メーカーとしては小売店への送料手数料をアマゾンへ支払えば済むことで、新たな負担は無いどころか一括委託で、むしろ節約されているものと思われる。
これでは在来の本屋が廃業に追い込まれるのは時代の流れで、致し方ないに違いない。

しかし、全国の本屋が消滅すれば、本屋の陳列を眺めて日頃思っても見なかった世界を知る楽しみが失われてしまうのではないか。特に中学生や高校生など、これからの日本を背負うべき人たちの知識欲を刺激する機会が失われるのは日本の将来にとって由々しき事では無いかと思われる。

なお東京駅八重洲口前のブックセンターのような、一日の売上高の多い都会の大きな本屋はアンテナショップとして今後とも生き残り、地方中小都市の本屋は消滅する。それによって知識習得機会の地域格差がさらに深刻化することも避けられないが、これまた憂慮すべきことではないか。

(注)アマゾン・ドット・コム=世界的規模のインターネット小売り業者。一九九五年アメリカで書籍の販売から創業。 (広辞苑による)

(平成二十七年四月四日)

ramtha / 2015年7月9日