イスラエルとパレスチナの紛争はもう何十年も続いているが、いまだに治まらない。最近はシリアの内戦やイスラム過激派によるテロの頻発に目を奪われているが、相変わらず続いているようで、先日の毎日新聞には「ユダヤ教過激派 火種に」という見出しで、次のようなレポートが載っていた。
10月から急拡大したパレスチナ人によるユダヤ人襲撃事件。パレスチナ政策調査研究センターのシカキ代表は、9月中旬に激化したエルサレムのイスラム、ユダヤ両教徒の聖地を巡る対立に加え、7月末にイスラエル占領下のヨルダン川西岸ドゥーマ村で起きたユダヤ教過激派の犯行とみられるパレスチナ人民家放火事件の影響が大きいと指摘する。事件では1歳6ヶ月の男児とその両親が死亡した。「犯人は特定されず、怒りが高まっていたところに宗教上の衝突が起きた」と分析する。
同様の放火事件は6月にも起きていた。イスラエル北部ガリラヤ湖畔のタブハ村にあるキリストゆかりの「パンと魚の奇跡の教会」。「邪神」との落書きが残されていた。イスラエル対内情報機関シンベトは8月、ユダヤ教過激派のメイル・エッティンガー容疑者(24)らを、両事件に関与した疑いで逮捕したが、起訴には至っていない。
メイル・エッティンガー容疑者は、米国生まれの極右活動家でユダヤ教指導者の故メイル・カハナ氏の孫。同氏は1970年代に極右政党「カハ」を創設し、非ユダヤ人の市民権剥奪など過激な政策を提唱したことで知られる。
治安当局関係者によると、ユダヤ教過激派の若者は数百人に上る。占領地の丘に小屋などを立てて寝泊まりし、パレスチナ人を攻撃してきた。イスラエルのシンクタンク「ユダヤ人民政策協会」上級研究員、シュロモ・フィッシャー氏は「彼らは自分の中にある『神の声』が過激な行動を求めていると思い込んでいる」と指摘する。
過激派は、占領地の入植活動を妨害するものを「プライス・タグ(報復の印)」と称して攻撃。パレスチナ人だけでなく、無許可の入植用建造物を壊すイスラエル軍兵士らも対象としてきた。パレスチナ当局によると、過去10年にパレスチナ人が多く住む西岸や東エルサレムで起きたプライス・タグ事件は計1万1千件。容疑者が起訴されたのはわずか8%だ。
手口が巧妙なことに加え、右派政権の「及び腰」も指摘される。入植者の投票率が高く、右派政治家の命運を左右する存在。ネタニヤフ首相率いる右派リクードが政権を握った2009年当時、ミシガンの入植者は約28万人だったが、これまでに約40万人に膨れ上がっている。
現政権の一部閣僚は、エルサレム旧市街の「ハラム・アッシャリーフ(高貴なる聖域)」(ユダヤ教の呼称は、「神殿の丘」)での礼拝行為は「イスラム教徒に限る」とした合意の見直しを提唱。対立激化の呼び水となった。
ケリー米国務長官は11月28日、双方の衝突激化に懸念を示した上で、パレスチナ国家樹立によるイスラエルとの二国家共存が「唯一存続可能な選択肢だ」と改めて訴えた。だが75年から入植活動を指揮してきた西岸ケドミム入植地の代表ダニエラ・バイス氏(70)はこう語る。「私は40年前、わずか数人で入植活動を始めた。我々がいる限り、二国家共存は実現しない」
これに関する私の考えるところを整理してみる。
① この記事ではパレスチナ人に対するユダヤ人の不法行為が一万一千件あると言うのに、起訴されたのはわずか八%と言うのは、治安を維持すべきイスラエル検察当局の取締放棄と言われても仕方がない。
また右派政権の「及び腰」というのも、イスラエルに対して遠慮した表現で、真実は過激派の不法行為を支持しないまでも黙認しているということではないか。
② ユダヤ系ロビイストの圧力に左右されるアメリカ政府の後押しを力に、我が物顔に振る舞うイスラエルには、腹立たしくなることがしばしばあるが、この記事を読んで、ユダヤ人は今なお旧約聖書による選民意識を誇示しているのかと驚いた。
日本にも高天原神話があるように、世界の多くの民族には、それぞれ選民思想めいた建国神話があるだろうが、多くは神話として語り継がれているだけで、ユダヤ人のように今なお信じ、日常意識している民族はいないのではないか。この状態が事実とすれば、彼らが世界中の民族から嫌われても仕方がない。彼らには、他の民族と仲良くしようと言う考えなどがないのだろうか。
③ ケリー米国務長官の、「パレスチナ国家樹立によるイスラエルとの二国家共存が唯一、存続可能な選択肢である」との発言も、単なるリップサービスに過ぎないのではないか。占領地への不法入植を国連が拱手傍観しているのを見ても、イスラエルよりのアメリカ議会が承認するとは思えない。
④ イスラム過激派といい、ユダヤ過激派といい、宗教が絡むと問題は深刻化し、解決の見通しが立たなくなるようである。近年国家間の紛争もさることながら、こうしたテロが世界中に蔓延しているが、国家が世界を構成すると言う今までの図式が崩壊し、世の中が大きく変わるのではないかと言う予感がする。
(平成二十七年十二月五日)
ramtha / 2016年3月18日