小学生の暴力が増えている。とりわけ低学年の増え方が心配だ。「突然キレる」「感情のコントロールができない」などといった現象が学校現場で言われる。
文科省が今秋まとめた統計によると、全国の小中高校で起きた2014年(平成26年)度の「暴力行為」は54,242件だった。このうち中学や高校は減ったのに、11,468件の小学校は4年連続で増え続け、最多を更新した。
件数は学年が進むほど増えるものの、増えた率は低学年ほど高い。現行の調査になった2006年(平成18年)度に比べると、1年生が5倍、2年生が4.3倍に上がっている。子供の間だけでなく、教師が蹴られ続けたり、登校途中に注意した通行人に暴行した例も報告されている。
文科省は「就学前に家庭での躾ができていない」面などを上げ、専門家は今の子供たちの抱えるストレスの大きさを指摘する。この低年齢化は、たまたまと言う統計結果ではない。文科省は調査を生かし、さらに掘り下げて傾向を解析し、対策を講じるべきだ。
中学、高校での暴力行為が減ったことについて、文科省はスクールカウンセラーの配置や警察との連携など、早めの対応がある程度効果を上げたとみる。一方、小学生には、中学・高校生に比べて対処しやすいと言う考え方も教育行政側にはあっただろう。
また「いじめ」の問題にも通じる課題だが、しばしば担任が1人で問題を抱え込み、事態に対応しきれないと言う面がある。相談して情報を共有し、組織として取り組むことが肝心だ。
教師の問題抱え込み等を改める観点から、横浜市教育委員会は5年前、先駆けて小学校に「児童支援専任教諭」を置く制度を始め、昨年度市内1,341校に配置を終えた。
任命された専任教師は担任を持たず、授業数も軽減。子供たちを見守り、声かけをし、問題があれば家庭や児童相談所など、校内外連携の窓口として動く。いじめ解消などに効果を示していると言う。幼い子供は、自分の境遇や思いを言い表す力が未熟である。暴力を振るう原因は単一ではないが、親からの放置、貧困格差、生活苦、虐待など、生活環境の様々なストレス要因も絡み合う。そのストレスの背後には社会の歪みがある。
「子供の問題」と言うより、子供が負わされた「社会問題」と言うべきではないか。大人社会の歪みが、子供に濃い影を落とし、心身の不安定な状況に追いやる構図。それを改める事は、大人社会の責任である。
これを見て感じたことを整理してみる。
① 当世の日本人が、私が経験してきた昭和の時代とは、大きく変わっているとは日頃感じているので、子供もそれなりに変わっているのだろうとは思っていたが、これほど暴力を振るう児童がいるとは知らなかった。
② その原因についてここでは、親からの放置、貧困格差など抽象的項目を並べて子供のストレスの要因は一括して社会の歪みにあると結論づけている。それは常識ある大人なら誰しも想像することで、新聞社の社説としては、今少し具体的な分析を述べてもらいたいものである。
ここに記されているように、様々な要因があることで、そのすべてにわたって詳細に論じることは、割り当てられた紙面では不可能なことであるには違いない。とすれば、その一つを取り上げ具体的に掘り下げて解説してはどうかと思われる。常識的平板な抽象論を述べるより有意義と考えるがどうだろう。
③ 私は、ここに掲げられているすべての要因について異論があるわけではないが、最も重視すべきものは、親からの放置にあると思う。その原因を突き止め、これを改善することが何よりも大事なことであると感じている。
④ 近頃は女性の社会進出がしきりと促されているが、国の健全な発展のため、女性の社会進出は絶対の必要条件であろうか。大正生まれの老骨は首を傾げたくなる。男女同一待遇など過去の不当な男女差別を是正することは大切なことで、これを否定しようとはさらさら思わない。
しかし男性は胎児を孕むことができないなど、男にはできない能力を女性は神から与えられている。男女に拘わらず乳児は母親の乳房をまさぐり、母親に抱かれて育つのが自然のあり方である。太平洋戦争でも、敵弾に倒れる兵士が最後に叫んだのは、建前の「天皇陛下万歳」より、「母さん!」の一声であったと聞いている。
⑤ ニュースでは、毎日のように強盗殺人や嬰児生き埋めなどの凶悪犯罪が報道されている。その犯人の大半は幼児期に両親、とりわけ母親の愛情を知らない環境に育っていると聞く。健全な社会は親の育児に支えられていると言っても過言では無い。
⑥ 現今の庶民生活では、夫婦共働きは避けられないことだろうが、私は子供が小学校卒業するまでは、母親は家にいて欲しいと考えている。子供が帰宅した時、母親の笑顔が迎えてくれる環境が、子供の健やかな成長に最も大事なことではないか。それができないにしても三世代同居で、祖父母が母親代わりに「お帰り」と声をかけられればと願っている。
⑦ 安倍さんは「一億総活躍」をスローガンに掲げ、女性労働力の活用など考えているようだが、子供の健全な育成にも、人口減少の歯止めにも、専業主婦手当の支給等の支援の方が焦眉の急と思われるが、どうだろう。
⑧ 今一つ、荒れる児童の要因として、最近の少子化が挙げられる。昔は五~六人兄弟姉妹と言う家庭はざらで、私なども六人兄弟の五番目で、衣服はもとより、小学校の教科書も兄貴のお下がりしか与えられなかった。
兄弟喧嘩も毎日あったものだが、下の赤ん坊を負わされて上の子が毬つきをする姿も見られたことである。そうした中で、当時の子供は、我慢することや幼い子の面倒を見ることを体験させられた。
当世は一人っ子が多くそういう経験がないことも、すぐ切れる原因となっているのかも知れない。
(平成二十七年十二月六日)
ramtha / 2016年3月19日