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一月二九日 「『廃棄カツ横流し』」で考える

毎日新聞に「廃棄カツ横流し」事件に関する中部報道センター町田結子記者による次のようなレポートがあった。

カレーチェーンを展開する「壹番屋」が廃棄処分を委託したはずのビーフカツがスーパーで見つかったのを発端に、愛知県内の産廃業者が廃棄食材の横流しを繰り返していたことが明らかになった。転売の流れを取材する中で見えてきたのは、厳しさを増す食品業界の競争と、まだ食べられるのに廃棄される大量の「食品ロス」の課題だ。ただ、これらは日本の消費者の要求が生んでいるとも言えないだろうか。不正転売の背景にも目を向けたい。
産廃業者「ダイコー」から横流しを受けた岐阜県の食品関連会社「みのりブース」の倉庫からは、壹番屋の食材以外にもみそや惣菜など計一〇八品目が見つかった。
みのりの実質経営者は県の調査に「全てダイコーかち仕入れた」と説明。カツやみそは弁当店や食品卸など七業者に転売したことを認めている。発端のカツは、一枚三〇円程度でダイコーからみのりにわたると、「格安食品」として繰り返し転売され、消費者の口に入った。取材を通して浮かび上がったのは、こうした食材を仕入れてしまった零細弁当店や中小スーパーを取り巻く厳しい現実だった。
「通常の三割程度という安さに最初は驚いたんだけどね。お客さんに喜んでもらいたくて買ってしまった」。愛知県内の弁当店の店主はこう言ってうなだれた。店頭に出す三五種類の弁当は一律二九〇円。人件費など差し引けば、食材にかけられるのは100円が限度という中「普段なら買えない食材」だった一枚四五円のカツに飛びついたという。
弁当店との取り引きが多い名古屋市の食品卸業者は、業界の厳しい実情について「三五〇円とか三〇〇円でないと客を取られちゃう。だから、安い食材を探すのにどこも血まなこになっている」と明かした。名古屋市内にある地域密着型スーパーも「数量限定のスポット商品」と紹介されたカツを、一枚六五円程度で仕入れ、五枚一パック三九八円で店頭に並べた。厳しい競争を背景に、一円でも安い食材を求めた結果つかまされたのが、処分されたはずの「格安食品」だった。
景気が停滞しモノやサービスの値段が継続的に上がらない「デフレ」から日本経済が脱却できていないことは、安倍晋三首相も最近の国会答弁で認めている。こうした中、大手のような商品調達力や販売力がない中小零細業者が客をつなぎとめるには、低価格で勝負するしかない面もあるだろう。そうした泥沼化とさえ指摘される過当競争に滑り込んできたのが問題の「食材」だとしたら、消費者も無関係ではないだろう。
「まだ食べられるのに、もったいない」。ダイコーの経営者は、廃棄食材の横流しを始めた理由をこう語っている。実際、本来は食べられる商品が、リニュ-アルや賞味期限が迫ったという理由でダイコーに持ち込まれたケースは少なくない。農林水産省によると、このようにして事業者が出す国内の食品ロスは年間三三一万トン(二〇一一年推計)。世界の食料援助量(三二〇万トン、一四年)をも上回る量だ。

まだ食べられる食品の廃棄には、日本の食品業界にある「三分の一ルール」と呼ばれる商習慣が深く関係している。小売店への納品期限は製造日から賞味期限までの三分の一、店頭での販売期限は次の三分の一とするもので、残り三分の一を切った商品は店頭から撤去、廃棄となる。ダイコーに持ち込まれた「マルコメ」のみそも、大半がルールに従ったものだった。
世界的にも厳しいルールが存在するのは、より新しく鮮度の高い商品への消費者のこだわりがあるからだ。もちろん選ぶ権利はあるが、過剰なこだわりが食品ロスの温床であることを、私たちは忘れてはならない。

ロスを省くある企業の取り組みを紹介したい。スーパーやコンビニは通常、欠品を避けるため過剰に在庫を抱えるが、格安で知られる「業務スーパー」では、過剰在庫=悪、だ。在庫を極力抱えずギリギリで商品を回す。欠品して客が買えないこともあるが、運営する神戸物産の社長は「無駄やロスを省いてこそ、今の品質と価格が実現できる。客の声に100点で応えるのがベストだが、それで失われるものもある」と語った。品質、低価格、サービスのすべてを求めれば、どこかにしわ寄せが行くというメッセージとして受け取りたい。安全への懸念から廃棄された食品の不正流通など、もちろんあってはならない。ただ、今回の事件は、安価で過度に新鮮な食品を求める私たち消費者への「警告」でもあるのではないか。そう思えてならない。

この記事を見て考えたことを整理してみる。

① 食品業界の「三分の一ルール」というのは初めて目にした言葉だが、賞味期限過ぎの食品の中にはまだ安全なものが少なくないとは聞いていた。消費者は購入した日に消費するとは限らない。だからメーカーは相当な余裕を置いて賞味期限を設定するものだとは聞いていた。

② 消費者は陳列された商品の賞味期限のラベルを見比べて、賞味期限の最も余裕のあるものを選ぶことになる。だから期限までの日数の短いものが売れ残ることになる。

③ スーパーの陳列棚には商品が多いほど顧客の購買意欲をそそるもののようで、多くの店では陳列棚に隙間ができる度に商品を追加している。

④ だから閉店間際でも陳列棚には多くの商品が載っている。あの商品はそのままの状態で翌日開店するとは思われない。前日売れ残りの商品の始末はどうなっているのだろう。賞味期限ラベルの貼替えなどしてないかなどと気を回すのは下司の勘繰りだろうか。

⑤ 日本人の安心安全意識のレベルは相当高いもののようだから、家内が毎日利用する中小のスーパーの商品でも何ら危惧することもないのだろう。

⑥ こんな清潔で便利なスーパーを利用するようになったのはいつ頃からだろう。麻生産業(株)の用品課・売店が分離、麻生芳雄商事(株)が飯塚病院横にスーパーあそうを開業したのが昭和四三年三月のことだから、都会ではもっと早かったに違いない。

⑦ いずれにしても、われわれ庶民に至るまでこんな安全で豊かな食生活ができる日本はまことに有り難い国である。貧困に苦しむアフリカや日夜戦闘を繰り返す中東などでは、まともな食事にも事欠く多くの人々が居る。この新聞記事ではないが、まだ食べられる食品が年間三三一万トンも廃棄されているなど、今日の世界では日本人の良識が疑われることであり、政府がなんらかの対策を講じずべきものと考える。

ramtha / 2016年5月16日