筋筋膜性疼痛症候群・トリガーポイント施術 ラムサグループ

三月三十日 「拝金主義の中国」

今日も宮坂 聡氏の「日本人が知らない中国人の不思議な生活」を読む。

ニOOO年代に入った頃には、一九八〇年代には「割りの合わない職業」であった医者と弁護士が、すっかり本来の地位を取り戻し、高額所得者の列に加わることができていたのも特徴的な変化であった。

一つの現象が現れると激化してしまうのも中国が持つ一つの特徴でもあるのだが、この二つの職業については、「割りの合わない職業」から一気に「拝金主義の塊」と批判される対象となっていったことも社会では興味深く受け止められた。

病院の多くは、にわかに経営を重視するようになり、経済力で患者を選ぶという問題がメディアを賑わせた。支払い能力のない患者と分かれば、平気で門前払いを食らわせるケースも頻発し、深刻なトラブルに発展するケースも少なくなかった。政府もこの問題を重視し、多くの病院の治療費が高額化する流れを抑えようと、廉価で診療を受けられる「平民病院」を各地に設立したが、問題解決には程遠い状況が続いたのである。

問題が深刻化した二〇〇〇年代の終わりごろには、診療を拒否された患者の遺族が、患者の亡骸を病院の入り口まで運んで抗議し、一時期は病院の施設内で勝手に葬式をすることが流行したこともあり、警察がわざわざこの行為を「違法」と発表する事態にまでなったのである。

また、治療費が高額すぎることから、患者側の要求も厳しくなり、手術の失敗などがあると、後に恨みを抱いた患者から襲撃されるという事件も高い頻度で起きたのである。このことはやがて医学部を目指す学生が激減するという現象となって、社会全体に大きな影響を与えたのである。

医者と同じように弁護士も、「拝金主義の権化」とばかりに厳しい批判にさらされるようになるのだが、メディアが大きく取り上げたのは、二〇〇〇年代終わりごろから二〇一〇年代にかけて起きた「賃上げ訴訟」に絡む問題としてであった。

このころ中国における労働環境は大きく変化を遂げるのだが、そのムーブメントの中心となったのが「八十後」と呼ばれる若者たちの賃上げ要求であった。

だが、自主的な活動だと思われた彼らの背後には、実は賃上げ訴訟で大きな利益を上げようとした弁護士たちがいて、これが低賃金労働を核とした経済発展に限界を感じ始めた政府の思惑とも重なって大きな動きとなったことが、次第に明らかになっていったのである。

つまり、弁護士が裏で労働者を焚き付けて訴訟を起こさせ、企業をターゲットに大きな稼ぎに替えようとしていたのである。

事実、この仕掛けは見事に奏功し、中国は低賃金を売りに経済発展をする時代に幕を引くことになっていくのである。

これを見て感じ考えさせられたことを整理してみる。

① 「仁術」ならぬ「算術」を行なう医師は日本でも時に耳にすることがあるが、医療法などの規制によって医師が暴利を貪るなど通常はあり得ない。中国の医師に関する法的規制はどうなっているのだろうか。また日本の公的健康保険のような制度も中国では完備されていないようだから患者は治療費の負担に耐えられず、放置されることもあるのではなかろうか。

② それにしても、診療を断られて死亡した患者の遺族が、病院の入り口まで亡骸を運んで抗議をしたり、病院の施設内で葬儀をするなどとは、日本では考えられないことである。中国は何でもありの世界で、通常の社会常識も日本人とはまったく異なるのではと思われて来る。

③ こうした荒れる医療事情で、医学部志望者が激減しては、医師の質量ともにますます低下し、トラブルもさらに多発することになると思われる。政府も地方自治体も放置しているわけではないのだろうが、日頃の不満分子が便乗して暴徒化するケースも少なくないのかもしれない。

④ 総人口が日本の十倍の中国では、医師も弁護士も多数居ることで、中国共産党一党独裁体制の下でも、その監督取り締まりは容易ではないに違いない。まして袖の下が日常茶飯事のお国柄では、不正行為の根絶など夢のまた夢ではあるまいか。

ramtha / 2016年5月24日