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七月三十日 「尊敬の”尊”は酒を捧げる形」

人を尊敬するということは、心の中のことで、目には見えない。しかし、その抽象的なことを他人に知らせたり記録に残したりするのには文字にしなければならない。

漢字では、形のあるものは、その形を省略した、いわゆる象形文字で表わしている。これに対して「尊(とうと)ぶ」は、象形文字の組み合わせで表現している。

英語など表音文字(正確には表語文字)では、respectという抽象的単語で表わしているが、形而下的発想の漢字では、「とうとぶ」という抽象的な心理的行為を表わすために、祖先の墓に生前故人が好んでいた酒を降り注ぐ動作を描くことで、代用している。

すなわち「尊(とおとぶ)」と言う字を解体してみると、次のようになる。

「酉」の甲骨文字は酒壷を描いたもので、上の八は壷の中の酒が醸(かも)されて香りが外に漏れ出しているさまを表わしている。「寸」は手の象形文字である。

簡単にいえば「尊」は酒樽を手に持っている形だが、ここでは、お神酒を恭しく差し上げている形ということになろうか。

しかし、「尊ぶ」ということは、その人に酒をついで勧めているのではなく、恩師や先輩などに傾倒し、心服していることを表わしているのである。これも漢字の形而下的思考の一例である。

ramtha / 2016年8月21日