先日、NHK放映の「大学進学を諦める子は貧困児童」と言う番組に違和感を感じると記したが、今朝の毎日新聞にはこの問題についての反響を取り上げ、次の書き出しを掲げ「見えない相対的貧困」と題する記事を載せている。
子どもの貧困問題を扱ったNHKのニュース番組で、体験を語った女子高校生について、インターネット上で「貧困ではない」「捏造(ネツソウ)だ」と批判する書き込みが相次ぎ、自民党の国会議員がNHKに釈明を求める騒ぎとなっている。ネット上には住所などとともに女子高校生の容姿を中傷する書き込みまでされ、人権侵害が懸念されている。
「見えない相対的貧困」
NHKは今月一八日の「ニュース7」で、神奈川県の設置した「かながわ子どもの貧困対策会議」が同日開いたイベントで発言する県内の高校3年の女子生徒を取り上げた。生徒は、経済的な理由から専門学校進学をあきらめたとして「夢を持っているのに何でめざせないんだろう」と自分の境遇を訴えた。
番組は、母と二人暮らしでアパートに冷房はない、と伝えた。パソコンの授業のために、母にキーボードだけ買ってもらって練習したエピソードを紹介。アニメ関係の仕事に就くのが夢だと言う生徒の自宅での映像の背後に、イラスト用ペンが映った。
ネットには「参考価格一万九四四〇円」とする買い物サイトの画像が掲載された。
これは「七二本セット」の値段で、一本当たり二七〇円だったが、「二万円のペンを所有」という情報が拡散。さらには「部屋にアニメグッズがたくさんある」「千円以上のランチを食べたとツイートしている」として「貧困でない」と指摘する声が噴出、容姿などの書き込みも続き、自宅を撮影する写真もアップされた。
自民党の片山さつき参院議員も二十日にツィッターで「チケットやグツズ、ランチを節約すれば中古のパソコンは十分買えるでしょう」と疑問を表明、NHKに説明を求めるとした。二三日には「NHKは『貧困の典型例として取り上げたのではない』と説明した」と記した。
イベントを主催した同県子ども家庭課の小島厚課長は「食べるものや着るものはあるとしても、修学旅行や、部活の遠征に行けなかったり、進学をあきらめたりする『相対的貧困』の見えにくさを、考えようというイベントだった。まさに見えにくさゆえに、誤解が広がってしまった」と話した。
片山氏は取材に、事務所を通じて「ツイートの内容が現時点での見解で、それ以上は申し上げられない」と回答した。NHK広報部は「本人や家族、行政機関などに取材し、経済的に厳しい環境で生活する高校生だと判断しています」とコメントし、片山氏への回答内容は明らかにしなかった。
貧困問題に詳しいフリーライターのみわよしこさんの話。
政治家も含めて相対的貧困と絶対的貧困についての理解が不足している中で、社会の最も弱い者に対して攻撃のエネルギーが向かってしまった。貧困の解消についての社会的な合意を形成すべきだ。自宅の写真や容姿の中傷は立派な犯罪で立件は可能だと思う。「ネットだから」というやり得を許してはならない。
右の記事を見て感じたこと、考えたことを書き留める。
① 豊かであるとか貧しいとかいうのは、そもそも相対的なもので、絶対的貧困者とは、収入も住居も親族縁者も居ない天涯孤独の人ということになるが、今の日本にそんな人が居るとは考えられない。昭和初期には飯塚でも橋の下に住む人も見られたが、そこから小学校に通う子も居た。今は失業保険や生活保護などの社会保障が整備されているから、そんな人は居るはずがない。
みわよしこさんのいう絶対的貧困とは何か聞いてみたいと思っている。
② 「相対的貧困の見えにくさ」を考えようと企画した神奈川県の小島課長は、そのイベントがNHKで放映されることは事前に知っていたに違いない。その段階で、貧困に対する認識が千差万別で、事後に異論が出ることは考えなかったのか。疑問が残る。
③ まして義務教育を終えた高校三年生を、貧困生徒の実例として出演させたら、その結果いろんな意見が出ること、また本人への風当たりが起こることは考えなかったとすれば、あまりの不見識に驚かされる。
④ この放映を見ての異論があるとしても、それは直接小島課長に人知れず伝えるのが、常識ある大人の行動であり、インターネットに書き込むとは呆れ果てた。
子どもの書き込みとすれば、そんな卑劣な行為をする子どもの親は、日頃どんな子どもの躾をしているのか、聞いてみたいものだ。
⑤ この記事を掲載した新聞社も、「見えない相対的貧困」と見出しを付けながら、なんとなく、このケースを貧困児童と見なしているムードを漂わせつつ、責任逃れの記事に終始しているように思われるが、どうだろう。
ramtha / 2016年9月14日