今月の医療関連情報は、石岡第一病院 傷の治療センター長の夏井 睦氏が書かれました「傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学 (光文社新書) 」の概容をご紹介致します。
私たちのこれまでの常識は、「ケガをしたら消毒して乾かす」です。しかし夏井氏は「傷は消毒せずに乾燥を防げば、痛まず、早く、しかもきれいに治るとしています。これを「湿潤治療」と呼び、薬も高価な治療材料も使わず、擦り傷はもちろんの事、ひどい火傷も治してしまうという治療法です。
実際、大学病院で「入院して手術しかない」と言われた重症の火傷でも、「湿潤療法」を行うことで、2週間の外来通院で治った例が幾つもあります。ケガや火傷の治療の原則は、①傷を消毒しない。消毒薬を含む薬剤を治療に使わない。②創面を乾燥させない の2点です。この治療法が正しいことは、擦り傷を負った時に、ラップで傷を覆うとすぐに証明できます。ラップで覆うとあのヒリヒリとした焼け付くような痛みが軽くなるのです。
たいていの傷でしたら自己による「湿潤治療」でも治せますが、次のような場合は病院を受診して下さい。
①創面に砂や泥が入り込んで汚染されている場合。
②傷が深い場合。
③治療途中で38度台の熱が出たり、創部に痛みがある場合。
消毒薬はばい菌を殺してくれるから安心・・と無邪気に考えてはいけません。消毒薬はタンパク質を破壊する事でばい菌を殺します。しかし私たちの細胞もタンパク質でできています。従って私たちの身体も消毒薬の攻撃を受けてしまいますが、実は細菌の細胞膜よりも人の細胞膜の方が影響を受けやすいのです。傷を「ヨーチン」や「イソジン」で消毒するとすごく痛かったと思います。これは消毒薬が私たちの細胞を破壊し傷を深くしたからなのです。消毒薬が痛いのは当たり前の事なのです。
皮膚につく菌には「常在菌」と「一過性の菌」の2種類があります。皮膚の常在菌は皮膚が生活の場であり、皮脂を栄養としていて、そのワックス分に覆われていないと増殖できません。一方「黄色ブドウ球菌」などは皮膚は本来の生活の場ではなく一次的についただけであるため、皮脂を栄養として増殖できるようにできていません。これを人間の側から見ると、皮膚の常在菌がいる限り病原菌などが入り込む隙がなく人間を守ってくれると言うことになります。手洗いをし過ぎたり、消毒薬を使うという事はこの常在菌を住みにくくしてしまうことになり、病原菌などが侵入しやすくなると言うことになります。
最近子ども達のアトピーや乾燥肌が増えていますが、石けんでの洗いすぎがその一因として考えられます。実は人間の皮膚から分泌される物質(汚れ)はすべて温水で洗い落とす事ができるので、本来石けんは不要なのです。
石けんやシャンプーには界面活性剤が含まれるため、皮脂が落とされ過ぎてしまうのです。その為肌はカサカサして、髪はフケが多くなってしまいます。
アトピー性皮膚炎は治り難い疾患の代表格ですが、実はその多くは簡単に治すことができます。治療法は簡単で乾燥を徹底して防ぐ事です。
①痒みのある所に白色ワセリンをたっぷり塗り、時間を掛けて充分にすり込む。
②キッチンペーパーなどで余分なワセリンを拭き取って、べたつきを完全に取る。
③これを一日に数回繰り返す。 ・・・これでほとんどのアトピーが良くなって行きます。
ramtha / 2010年8月22日