「痛み治療」で重要なのは『脱感作』です。『感作』というのは、ある刺激に対しての許容範囲が小さくなったり、同じ刺激に対する反応が強くでてしまうようになる事で、一口で言うならば「過敏になる」という事です。 この過敏になった状態をリセットすることを『脱感作』と言います。
寝返りを打とうとしただけで足が攣ったり、ちょっと触れただけで鋭い痛みが走るなどという症状は、筋や痛み感覚が過敏になっている状態です。このような時に指圧をしたり、マッサージをしたりしても痛いばかりで症状はなかなか緩和しません。この過敏性を脱感作するだけでも身体の無意識的な緊張や防御反応が解除されて、身体がスッキリ軽くなります。
過敏性が解除されますと、指圧やマッサージを受けても気持ちよい痛さで、効果も飛躍的に高まります。従って、痛み治療で重要なのは、まず過敏になっている状態をリセットすることで、このリセットにとても効果的なのがPIR(ポスト・アイソメトリック・リラクゼーション)です。
PIRは指圧や筋膜リリースなど他の徒手療法と比較して、次のような点で優れていると感じています。
PIRを行った時の効果は次の通りです。
【イラスト図出典:『図解理学療法技術ガイド』文光堂刊 より引用 】
PIRは呼吸運動と組み合わせるとより大きな効果がみられます。(下図参照)
【イラスト図出典:『Post Isometric Relaxation』三輪書店刊 より引用 】
PIRは眼球運動と組み合わせるとより大きな効果をもたらす事ができます。
呼吸運動と眼球運動を組み合わせると、患者さんへの負担がより少なくなり、姿勢筋全体に波及するため効果はより大きくなります。
『アドバンス版 図解 理学療法技術ガイド―より深く広い理学療法技術の習得をめざして 』(文光堂刊)の309Pに「マッスルエナジーテクニック」の基礎理論として、等尺性収縮がどのようにして筋緊張の緩和に働くのかが説明されています。
1)等尺性収縮はγ系を調整し筋線維の長さを調節
等尺性収縮によって筋が短縮し筋紡錘の緊張は弛み、γ運動神経の活動が休止する。
さらに収縮後弛緩によって筋紡錘へのγ遠心性発射活動を減少させ、安静時の筋の伸張を許す。
2)自己抑制(Ib抑制)の原理
等尺性収縮により、静的緊張力がゴルジ腱器官によるIb抑制を生じさせ
脊髄α運動ニューロン興奮性を低下させて伸張に対する抵抗を減少させる。
1)2)によって、関節可動域改善、筋長と筋力の正常化、短縮した筋膜の伸張が可能となる。
3)相反抑制(Ia抑制)の原理
等張性収縮を使用する時は、Ia抑制の原理を用いる。
ある主動筋の収縮は、反射性に拮抗筋を抑制し弛緩させることで
動きを円滑にする。
障害側の拮抗筋に対して等張性収縮を実施することで、
障害側の筋を弛緩させる効果がある。
4)障害側拮抗筋の緊張を高め、虚弱すぎる拮抗筋の機能を改善
障害側筋が短縮し、関節可動域制限や痛みがあれば
拮抗筋の動きは抑制され、筋力も低下する。
そこで拮抗筋に対して、次第に強くなる抵抗に逆らって
一連の求心性収縮を繰り返させる事で、筋収縮に参加する錐外線維の数を増大させる。
3)4)の理論によって、障害側の短縮した筋の過緊張を弛緩させ
拮抗筋を強化させることが可能となる。
ramtha / 2010年12月16日