今朝の毎日新聞の一面トップには、昨年来シリア・イラクの一部地域を支配し、残忍過酷な行動を繰り返し世界の注目を集めている「イスラム国」が、日本人二人を拘束し、今月十七日カイロで安倍総理が難民支援として発表した二億ドル相当額を身代金として要求する事件が伝えられた。
赤い囚人服を着せられた日本人二人が手を縛られ、その中央後に黒装束に覆面をした大男がナイフを手にした姿で日本政府に身代金を要求し、七十二時間以内に応じなければ二人を殺害すると話す映像が映し出され驚愕した。
なおこれに関連して二人の識者のコメントが次のように紹介されている。
1)軍事アナリストの小川和久(静岡県立大学特任教授)はテロの連鎖を打ち切るために政府は「イスラム国」からの身代金支払い要求に屈してはならない。ふたりの行動に限らず、私たちは国際社会で行動する上での基準を考えなくてはならない。どこまでの行動なら危険に遭遇しないのか二人は分かっていなかったと言わざるを得ない。
「イスラム国」だけでなく、異文化の中で意思疎通に失敗すれば、攻撃を受ける場合もある。女性を見ただけで撃たれたという事例もある。異文化の中で行動することがどれほどの覚悟と知識を必要とするか、今回の事例を重い教訓にすべきだ。
2)ジャーナリストの田原総一朗さんの話。
今回の件は安倍晋三首相がエジプトやイスラエルを訪問し、反「イスラム国」側の支持を打ち出したことへの反発だろう。日本はかつて日航機ハイジャック事件で身代金の支払いなどに応じ、国際社会から批判を浴びた。政府は身代金を払って穏便に済ますか、対決姿勢を鮮明にするかの決断を問われるが、テロを受けたフランスの週刊誌「シャルリーエブド」が再度風刺画を掲載したように、暴力には屈しないのが世界の潮流だ。
取材やビジネスのために命をかけるのは本人次第で、良いも悪いもない。取材で危険な場所へ行くことが国益を損ねるとは思わない。
この二人の発言についての私の感想を書き留める。
① 小川氏の意見は至極もっともなことで、よろずグローバル化が進み、日本の若者に海外で活躍してもらわなければならない今日、適切な教訓と思われるが、今回の事件で若者たちが萎縮しないか、気がかりである。
② 被害者のうち、湯川遙菜さんが武装勢力に拘束されたのは昨年八月十四日で、犯行グループに尋問される動画の公開が同月十七日頃、もう一人の後藤健二さんが「拘束された」と友人に連絡したのは昨年十一月一日頃と言うことである。
ことの性質上我々国民には知らされていなかったことだろうが、政府はその情報を把握し隠密に対策を講じていたに違いなく、安倍首相も先刻承知したいたはずである。
にも拘わらず、なぜ今月十七日、カイロで反イスラム国支持の発言をしたのだろう。どう考えても安倍総理の強がりの性格と自己顕示欲が招いた大失態と言わざるを得ない。
③ 田原氏の「取材やビジネスのために命をかけるのは本人次第で、良いも悪いもない」というのに異論はないが、 「取材で危険な場所へ行くことが国益を損ねるとは思わない」と言うのは如何なものかと思われる。
今回の場合も後藤さんは湯川さん救出を目的としていたということなので、別にするとしても、湯川さんは取材ではないが、自分のビジネスの調査のために現地に足を入れ拘束されたもので、その救出に国は多大な出費を余儀なくされるだけでなく、国際関係にも影響及ぼすことになりかねないことで、国益を損ねることがないとは言えないのではないかと思われる。
いずれにしても事件の早期解決が望まれる。
(平成二十七年一月二十一日)
ramtha / 2015年6月23日