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「絹の道の落とし穴」

中国が目下設立中の「アジアインフラ投資銀行」の日本の参加について賛否両論がある中、昨日の毎日新聞には金子秀敏氏の「絹の道の落とし穴」と題する論説が掲載されていた。

下にその抜粋を記す。

”「中国にはあと五年から七年の時間しかない。それまでに手を打たないと、中所得国のわなに陥る可能性は五十%以上だ」と財務省の楼継偉氏が四月二十四日は北京のシンポジウムで語った。

「中所得国のわな」とは「中進国のわな」とも言う。
高度成長によって国民一人当たり所得が中進国レベルに達すると、賃金の上昇や労働人口の減少などにより成長は停滞するという理論だ。習近平国家主席は、昨年末から中国が高度成長期を過ぎてなだらかな成長が続く「新常態(New Normal)」に入ったが、中所得国のわなには落ちない」と言っている。

それなのに楼氏は、わなに落ちる確率は五分五分以上だと警告した。習主席は、陸と海の「二つのシルクロード」構想を打ち上げて、中央アジアに高速鉄道を、インド洋に多数の港湾を建設しようとしている。

巨大な外需を喚起して中国国内で余った鋼材やセメントを消化し、経済成長を持続させて中所得国のわなを回避する戦略だ。

だが楼氏は、わなに落ちないために今すぐ実行すべき政策を列挙した。
農村の労働力を都市に移転するための土地制度改革や戸籍制度改革、社会保障制度の確立や、市場規制の撤廃など経済構造改革など、すべて習政権が二年前に決定した「改革の深化」政策ばかり。

中国は資金を調達するために「アジアインフラ投資銀行」の設立に動き出した。中国の資金力に期待してアジアからも欧州からも参加国が相次いだ。参加しない日米の国内ではバスに乗り遅れたと言う焦りが出ている。

だが楼氏は率直に警告している。中国が高齢化社会に突入するまで残り時間は五年から七年。中国には鉄の長城を作る時間も余裕もないのだ。”

この論説を読んでの感想を、私なりに整理してみる。

① 今の中国政府は習近平の独裁と思っている。その中で楼氏のような異論を公表することは考えられない。反独裁勢力の台頭を警戒しての偽装、いわゆるヤラセではないかという疑惑を感じる。

② でなければ、楼継偉氏は、直ちに失脚するはずだが、今のところそうした情報は伝えられていない。今後どのようなことになるか注目される。

③ 楼氏の発言内容が真実とすれば、習近平は何らかの打開策を講じなければならない。
経済停滞に対する国民の不満を他にそらすために、軍事行動に出る恐れはないか。少なくとも尖閣諸島問題で、反日機運を高めるようなことをするのではないか。

④ 先ごろ安倍総理と握手し言葉を交わすなどして、緊張緩和の姿勢を示したようだが、あれは何だったのか。日本との国交改善で経済的支援を本心から求めているのだろうか。

結局は、いろいろな憶測が錯綜するばかりで纏まらない。独裁国家の行動を予測することは、私のような老骨には至難の業であることを思い知らされるばかりである。

(平成二十七年五月一日)

ramtha / 2015年7月21日