先日の峯村健司氏著「十三億分の一の男~中国皇帝を巡る人類最大の権力闘争~」から中国幹部の腐敗を紹介する記事について記したことであるが、今日の毎日新聞のコラム「経済観測」ではインターネット・イニシアティブ会長鈴木幸一氏が「真の姿をうかがいにくい大国」と題する次の一文を掲載されている。
中国の習近平国家主席は、「腐敗の追放」を掲げて軍の幹部に至るまで、次々と要職にある幹部を切り捨てているわけなので、最後の「皇帝」になるのではないかと思えるほどである。もっとも「皇帝」と呼ばれるくらいの強権を持たない限り、習近平主席自身が権力闘争の中で生き延びる事はできない、といったところまで来ているのかもしれない。
その習近平主席が350億円を超える資産を隠し持っているという報道が、米国でスクープとして取り上げられ、大騒ぎになりかねない状況のようだ。こうしたニュースは巨額の資産を持って中国から米国に亡命し、中国で指名手配の犯人のように写真と名前を公開されている人々が、意趣返しでリークしているのだともされている。
毎年七兆円を超す個人資金が海外に逃れているという中国では「事実かどうかはともかく、習近平主席の350億円と数字は一ケタ少ないのでは」なんて冗談も交わされているらしい。本当の所は薮の中だ。
中国から見れば、数百万円の賄賂で公職から追われるような日本の贈収賄などの金額はあまりに小さいということになる。汚職は決して許されるものではないが、こんなところにも、日中のスケールの違いを感じてしまう。
世界で存在感を増す中国だが、公表されている統計の数字が妥当なものかどうかの見極めが難しいだけに、その実態を判断するのは簡単では無い。海外のある友人は「国内総生産(GDP)の成長率が7%を切るとか言っているが、実際は2%も上回れない危機的状況だ」と驚くような数字を並べて中国の経済を心配している。
これを見ると、人口は日本の十倍以上、面積は約三十倍という巨大な規模を持ち、共産党独裁のベールに覆われている中国の実像は、専門家の目をもってしても、なかなか知りがたいということのようである。
世界中にはイスラム諸国やアフリカ、中南米など我々日本人にはその実像が明らかでない国は少なくないがそれらは遠隔の地にあり、その国の盛衰が直接日本の政治経済に及ぼす影響もさほどのこともないようだから無関心でもいられる。しかし、こと中国となればその一挙手一投足は、直ちに日本の政治経済に影を落とすこととなる。
町内に怪しげな人物がいるときは、所轄の警察官に警戒してもらったり、それでも不安な時は、他に転居するなどして身を守ることもできるが、中国が何をしでかすか分からないとしても、世界の警察官役の米国も些か疲労気味のようで気になるが、さりとて国を挙げて引越しできるものでもない。われわれ日本人としてはとりあえずは、できるだけ戸締まりや夜回りを怠らぬようにするしかあるまい。
(平成二十七年五月二十八日)
ramtha / 2015年11月18日