ふと獣(けもの)と人間の違いは何だろうと思った。
類人猿など二足歩行をしたり、時には石ころを道具にして堅い栗の実を割ったりしている。また先日のテレビでは集団で温泉を楽しむ光景が見られた。こうしてみると、彼らと人間の違いはどこにあるのだろうと考えさせられる。
それはまず言葉ではないかと思ったが、彼らもその鳴き声で仲間同士の情報伝達をしているようで、我々人間には理解できないが、人間の言葉と同じ機能を果たしている。
次に考えられるのは文字である。言葉は声の届く範囲内に存在する仲間にしか届けられないが、文字は時空を超えて遠隔の相手にも、後世の人にも情報を伝達することができる。これは現在のところ人間だけが有する情報伝達手段である。もっとも鯨は、その体が発する振動でずいぶん遠いところにいる仲間に情報伝達ができると言われているが、これは唯一の例外ではあるまいか。しかしいずれにしても、何百年、何千年もの時間を隔てて情報を伝達し得る文字は、人間だけが駆使できるもので、これが人間も他の動物と区別する唯一最大の所以と言える。
人間の文明は言葉を横糸、文字を縦糸として織り上げた布のようなものではないかと考えられる。
(平成二十七年八月二十七日)
ramtha / 2016年1月24日