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「難民を受け入れるドイツ人」

ヨーロッパへの難民の大移動は未だ続いているようである。受け入れるヨーロッパの国々では、経済的負担もさることながら、使用言語や生活習慣を異にする異民族との共生はトラブルも生じることと思われる。

毎日新聞では、ベルリン支局の中西啓介氏の「同化は心の治療から」と題する次のようなコラムを載せている。

日本より一足早く落ち葉を迎えたベルリンでは、至るところにクリにいたセイヨウトチノミが落ちている。珍しいのだろう、郊外の収容施設では、難民の子供たちがトチノミ集めに夢中だった。シリアやイラクなどから逃れてきた家族にとって、長い旅路の末の平穏だ。

収容施設職員のアリーナさん(34)は「ドイツでは女性や子供に先に食事を配る。難民申請も、病人、妊婦、子供が優先。だがイスラム圏では男性優先で、こうした文化の違いも難民の不満を高める」。順番を巡って対立したり、食事の後に皿の片付けさえしなかったりする難民もおり、受け入れ側にも疲労感が募る。

だが難民を一方的に非難することができない。「異文化を吸収できないのは戦争体験による心の病が原因」と施設長のキージンガーさん(60)。7割が心的外傷後ストレス障害(PTSD)やうつ病による不安を訴える。難民のドイツ社会への同化は心の治療から始まる長いプロセスなのだと痛感した。

難民登録は約2週間で終わる。紅葉も終わればトチノミを拾っていた子供たちも小学生だ。今は苦しむ者も、将来はきっとドイツ社会に多様性を与える。どんなドイツになるのか、期待が膨らむ。

これを読んで感じたことを整理してみる。

① 難民の戦争体験が心に深い傷を残していることまでは、気がつかなかった。戦後七十年、世界史に稀な平和の中で過ごした私自身の平和ボケを改めて痛感した。

② 日本には「郷に入っては郷に従う」という諺があるが、イスラム社会には通用しないのだろうか。手元の和英辞書には「When in Rome do as the Romans do」とあるところを見れば、英語圏社会では通用するらしい。

③ 日本で同様な難民を受け入れた時、ここに見られるドイツ人のような気の長く濃(こま)やかな応対ができるだろうか。異民族との共生経験の極めて少ない日本人には難しいことではないか。改めて反省させられた。

(平成二十七年十月二十六日)

ramtha / 2016年2月15日