今日の毎日新聞のコラム「発信箱」には、エルサレム支局の大治朋子記者が「大富豪の代理戦争」と題して、次の一文を記している。
アメリカ大統領選の予備選が始まる。ワシントン特派員として2008年、オバマ元大統領とヒラリー・クリントン氏の激烈な民主党指名争いなどを取材したが、その大統領選の舞台裏で、ユダヤ系の2人の大富豪が壮絶な戦いを繰り広げているとは知らなかった。
カジノ王、シェルドン・アデルソン氏(82)と、エンターテイメント系の実業家、ハイム・サバン氏(71)だ。
アデルソン氏は米共和党支持者で、最近では2012年の大統領選で同党候補のミット・ロムニー氏に約1億ドル(約117億円)を提供。イスラエル・ネタニヤフ首相の強力な支持者でもある。サバン氏はクリントン氏の有力支持者で、2008年の大統領予備選で支援した。今回、アデルソン氏が推す共和党候補が勝てば、米政府とネタニヤフ政権の険悪な関係が修復される可能性もある。ユダヤ人は米国の総人口(約3億人)の1~2%程度。だが米議会のユダヤ系議員は全体の5%を占める。米誌の昨年の長者番付では、トップ50人のうち10人がユダヤ系だった。
政財界で活躍するユダヤ人。従来はその大半が民主党支持者だったが、1951年に保守系ロビー団体「米イスラエル公共問題委員会(AIPAC)」が創設され共和党に接近。近年はこれに対抗してリベラル系ロビー団体「Jストリート」が勢いをつけ、イスラエルの占領政策を批判したりしている。
米国内で進むユダヤ人社会の分断。その中で2人はどんな熱戦を演じるのか。アデルソン氏と、共和党指名争いで優勢の不動産王ドナルド・トランプ氏は反目していたが、最近は接近の可能性も伝えられている。ホワイトハウス争奪戦。舞台裏の代理戦争にも注目したい。
昨年、元外交官・馬渕陸夫氏の「反日中韓を操るのはじつは同盟国アメリカだった」を読んで、ユダヤ人が世界の金融を支配していることを「ユダヤ人のグローバリズム」に記したが、大治氏のコラムを見て「金持ちユダヤ人」が世界一の大国アメリカを動かしていることを改めて認識させられた。
それにしても、彼らはその力で何をしようとしているのかが分からない。彼らの母国イスラエルは長年にわたり、パレスチナに侵入し、その土地を奪い、ときには殺戮も行っている。彼らが富を蓄える目的は何か。やはり旧約聖書の選民神話を民族のアイデンティティーとしているのだろうか。
ここに記されているリベラル系ロビー団体「Jストリート」がイスラエルの占領政策を批判していることが事実なら、ユダヤ人に対する見方も修正しなくてはならないことになる。果たして彼らが今後どのような行動をとるか見ものである。
ramtha / 2016年4月7日