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二月十五日 「国土を持たない国」

最近は世界各地でしばしばテロ行為が発生し、従来の国同士の戦争が個人的戦闘行為に、形を変えて来ているのではないかという気がしている。また一方では多国籍企業などというものが活発な営業活動をするなど、改めて「国」とは何かということを考えさせられている。

そんな中、今日の毎日新聞には、モスクワ支局の杉尾直哉記者の「心の中の国家」と題する次のようなレポートがあった。

果てしなく続く平原に、ぽつぽつと木造の民家がある。ロシア西部プスコフ州ペチョルイ地区。旧ソ連を構成し、今では欧州連合(EU)加盟国のエストニアとの国境まで10km。ここに、「セト」と呼ばれるユニークな少数民族が住んでいる。

ロシア側に二百人、エストニア側に一万人と分断された民族だ。民家を改造したセト民族博物館のマリーナ・ピリイメキさん(四九)は澄んだ青い目、ふっくらとした大きな体が印象的だ。手縫いの刺繍の民族衣装を身にまとい、ロシアの昔話から飛び出してきた女性のようだ。「刺繍のパターンはロシアとは異なりますよ」と、誇らしげに話した。

セト語はエストニア語に近いが、エストニア語と違って文字はない。一方、宗教はロシアと同じ東方正教会だ。プロテスタントが主流のエストニアとは異なる。博物館のビデオから、老若男女の素朴な合唱の声が響いていた。「セト国の国歌」という。毎年選挙で改選される「国王」もいる。仲間内のもめ事の解決が主な仕事という。この博物館はロシア政府の支援を受けているが、「無害」との判断からだろう。

「国土はなくとも国民を維持することはできます」。
マリーナさんの言葉に、独自の生き方を守ろうとするセトの知恵を思った。

「国」と言う言葉から通常は、国境によって他国とは区別された「国土」と、そこに住む「国民」、その国民を統治しその国を代表する「指導者」が、思い浮かぶものである。多くの人口を抱える同一民族でありながら、トルコ、イラク、シリアに分かれ住むタルト人のようなケースもあるが、占有する国土を持たず、国民の帰属意識だけで存立する国があることは、私は初めて教えられた。

前後の文章から想像するに、猟銃は持っているかも知れないが、武器として使用することなど考えてみたこともないに違いない。お伽(とぎ)話に出てくる国のようで、日頃無差別爆撃や無人飛行機による攻撃など物騒なニュースに洗脳されている私には、国土を持たない国など、夢物語を聞く思いである。

「無害」だからロシアが黙認していると書かれているが、もしかしたら、日夜、戦争と政争に明け暮れるプーチン大頭領が、自らの憩いの場として大切に保存しているのかも知れない。

ramtha / 2016年5月19日