筋筋膜性疼痛症候群・トリガーポイント施術 ラムサグループ

五、事務用品・文房具など(④ 書類綴じ)

④ 書類綴じ

書類を纏めたり、綴じたりするのに、今日ではクリップ・ホッチキスやファイルブック、さらには製本テープなどといった極めて便利なものがある。
昔は使い古しの和紙を短冊型に切り、これを捻って紐状にした紙捻(こより)を作って、これを綴紐(とじひも)としていた。

小学校一年生の手工(今日の工作)で、紙捻を作る練習をさせられたが、不器用な私は何度やっても上手く出来ず、苦労した。
器用な友達は細長く、摘んで立てると、ピンと真っ直ぐ立って曲がらない見事な紙捻を作るのに、私の作品は太くて短く、立ててもグニャリとお辞儀もするまことに不細工な代物で、いつも恥ずかしい思いをした。

若い頃、麻生本社の庶務課に勤務していた。当時の上司に矢野与四郎さんという方がおられたが、暇があれば何時も紙捻を縒(よ)って、机上のコップに何本も差し立てて居られた。それは芸術品とも言えるような見事なもので、それを見ると、私はいくら暇があっても、紙捻を縒る気にはならなかった。

また矢野さんは紙捻を三本縒り併せて、さらに丈夫な紙捻を作って、契約書などの重要な書類を綴じるときに使われていた。私は長年、この縒り合わせたものを「かんじんより」と言うものとばかり思っていたが、これは怪しい。「かんじんより」は漢字ではどう書くのだろうかと、広辞苑をめくってみたが、「かんじんこより」の項では「かんぜこより」参照とあり、「かんぜこより」の項には次のように説明されている。

かんぜこより(観世紙縒)=観世大夫が姶めたものという。一説に、カンジンコヨリ(勧進小縒)の訛(なまり)で、勧進奉加者が名を細長い紙に書いて縒り、仏像の胎内などに納めたものに由来するという。かみより。こより。かんじんより。

いろいろ調べてみたが、結局、紙縒を三本縒り併せたものを、正しくは、なんと言うのか、分からなかった。
何枚にもわたる重要書類の場合、単に紙捻で綴じるだけでなく、袋綴(ふくろとじ)装幀をしていた。私が庶務課に居た昭和二十三年頃は、今日のセロテープや製本テープなども無く、綴代(とじしろ)の部分を糊付けしていた。当時はまだ戦後の食糧不足の時代で、鼠も飢えていたのだろう、夜間、机の引き出しに保管していた書類の糊付けした袋綴部分が噛られ、困惑したことがあった。事務机も今日ではスチール製で、鼠の進入する隙間も無いことだろうが、当時は木製の机で、少しの隙間があれば、鼠は引き出しの向板を噛。て穴をあけていた。

その後、事務室中の机の引き出しの奥に、防護板を打ち付けるなどしていたが、それでも鼠の被害は後を断たなかったようだ。

(註)袋綴(ふくろとじ)=書類の装幀のて文字を記した面を外側にして紙を一枚ずつ中央から二つに折り、幾枚かを重ね、折り目でない方を糸・紙縒などで下綴じする。前後に表紙を添えて綴じる。普通の和装本はこの装幀が多い。

 

ramtha / 2016年5月11日