今朝の毎日新聞には、論説委員・中村秀明氏の次のような論説が記されている。
ギリシャの財政危機が再燃するかと思ったら、そうではなかった。
ユーロ加盟各国が先週、「改革努力を踏まえ、さらにお金を都合しよう」ときめた。103億ユーロ(約1兆2600億円)を追加融資する。財政が劇的に良くなったのではない。なりふり構わぬ姿勢への評価だ。フランスの放送局が、ギリシャは国土売却に励むと伝えていた。
古代都市ペラの遺跡やアテネのオリンピック競技場、エーゲ海に浮かぶ597の島などを売るという。国土を切り売りし、国の借金返済にあてる前代未聞の対応である。
すでに14の地方空港と、アテネの玄関口・ピレウス港の運営権が売却された。空港はドイツの大企業が買った。ピレウス港は中国の国有企業が手に入れた。中東欧への物資輸送の拠点であり、中国は国家戦略「陸と海のシルクロード経済圏」の足場にする気だろう。
国が困窮すれば、その資産や価値がお金のある他国や多国籍企業にやすやすと利用されるということか。ところで国が背負う借金残高と国内総生産(GDP)を比べると、ギリシャの借金はGDPの1.8倍程度だが、日本は2倍を超す。もちろん日本は巨額の金融資産を持ち、米国など多くの国に金を貸す立場だ。税金をきちんと徴収する制度を備え、民間経済も力がある。
反面、運命をともにするユーロ圏のような仲間はいない。ギリシャの借金総額が約40兆円なのに日本は1200兆円超もあって国土を切り売りしたところで、焼け石に水という違いもある。
一番の違いは、ギリシャの付加価値税率が23%で日本は8%という点にある。「負担ののりしろ」が大きく、外国などあてにせずとも工面できるのだ。ここに救いを見いだして現政権は消費増税をしながらも、借金を約100兆円増やして来たのだろう。その上で、また先送りである。
新たな財源がない中、格差をただす政策、子育て世帯や子どもに手厚い政策はますます遠のきそうだ。そして現役世代は逃げ切れても、今の子どもやこれから生まれる世代が、いずれ重い税負担を背負わされる。そんな将来を見通せば、今は消費や投資をなるべく控え、守りに入るのが賢い選択である。結果、景気は低空飛行を続けるしかない。
「過去の政権に分別がなかったからだよ」アテネ市民がテレビカメラに苦笑しながら語っていた。ギリシャが身近に思えた。
これを見て教えられたこと、考えたことを、整理してみる。
① 国が財政を補うために、自らの国土を切り売りするとは初耳で驚いた。国が滅亡するのは、もっぱら他国の侵略によるものとのみ考えていたが、こんなプロセスもあり得るということを教えられた。
② こんな現象の原因は、ひとえに時の政治家の大衆迎合主義によるものと思われる。今一歩突。込んで言えば、そうした政治家を求める一般国民の我儘であり、それを許す社会の風潮である。
③ 最近の新聞紙面を賑わすニュースに「保育所の待機児童」がある。その原因を辿ると、母子家庭の貧困があり、その奧には無分別な離婚があり、更にその奧には、いとも手軽な結婚もしくは男女同棲がある。それらが容易に行なわれるようになったのには、高度経済成長や、手厚い社会保障制度など、さまざまな要因があるが、基本的には自己責任の忘却と思われる。
④ 戦後子供の数が減少し、進学率が向上するとともに、親離れ子離れの時期が遅れ、子供の自立心が薄れてきたように思われる。ことに高度経済成長期には、親が豊かになるにつれ、その傾向が強くなって、フリーターや二ートと言われるものが現れてきた。これも考えてみると戦後のプライバシーや個性尊重と言う風潮の影響を受けてのことのような気がする。
⑤ ところが最近では経済は停滞し、雇用の窓口も思わしくない。おまけに東日本大震災や熊本大地震のような天災地変に襲われ、少子高齢化の日本はどうなるか、心配でならない。中村氏の言うように、われわれ老人は逃げ切るとしても、子や孫はどうなるか。
アベノミクスの成果はともかく、安倍総理よ、間近な選挙より、長い目で日本の将来を考え行動してもらいたいものである。
ramtha / 2016年7月2日