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七月十日 「米国ユダヤ人社会の動揺」

ユダヤ人のことに関しては、五月三日の「伴奏者を失う時」でも取り上げたが、今日の毎日新聞では、防衛大学校名誉教授の立山良司氏が「米ユダヤ社会の亀裂」と題する次のような論説を載せている。

今年の米大統領選挙ではトランプ現象もさることながら、民主党予備選挙でバーニー・サンダース氏が善戦したことも驚きだった。

同氏は主要政党で本格的な指名争いをした初のユダヤ系候補だ。しかもイスラエルの占領軍政策や米国のイスラエル寄り姿勢を批判している。米国政治でイスラエル批判はタブーだ。にもかかわらずサンダース氏は善戦した。それを可能にしたのは、米国ユダヤ社会をめぐり現在進行中の二重の亀裂である。

近年米国とイスラエルの二つの社会間では、亀裂が広がっている。米国ユダヤ人の多くはリベラルで人権などを重視する。一方イスラエルのユダヤ社会ではますます右傾化し、パレスチナ問題の解決にも消極的だ。占領を続けるイスラエルに対し、米国ユダヤ社会では若者を中心に批判が強まっている。

亀裂は米国イスラエル公共問題委員会(AIPAC)などイスラエルーロビー主流派は、イスラエル政府の行動を無批判に支持している。さらにイスラエル批判を封じ込めようとしてきた。こうした主流派に若い米国のユダヤ人は背を向け始めている。

米国とイスラエルの「特別な関係」を支えてきたのは、米国ユダヤ社会の一体性だった。だが、米国ユダヤ人にとって、イスラエルが持つ意味は変化している。二〇〇八年には、イスラエルに批判的な新しいロビー組織「Jストリート」が登場し、若者の支持を得て活躍している。

昨年、AIPCAはイラン核開発合意に断固反対し、激しいロビー活動を展開した。しかし合意は成立し、AIPCACは歴史的敗北を喫した。米国ユダヤ社会内で多様化するイスラエル観と、イスラエルーロピーの変化については拙著「ユダヤとアメリカ・・揺れ動くイスラエルーロビー」で詳述しているが、極めて興味深い。

なお、付属資料として、次のように「米国ユダヤ人社会」の解説が記されている。

米国在住のユダヤ人は、総人口(約3億人)の約2%を占める。一方、米議会のユダヤ系議員は全議席の約5%。政財界の有力者も多く、昨年の米誌長者番付 では、トップ50人のうち2割がユダヤ系であった。

政治参加の意識の強さから、有権者登録、投票率ともに高いことで知られる。伝統的に民主党支持者が多く、2008・12年の米大統領選では、米ユダヤ人有権者の7~8割が同党のオバマ大統領に投票した。

これを見て教えられたこと、考えさせられたことなど私なりに整理してみる。

① サンダース氏がユダヤ系の人物であることは、ちっとも知らなかった。何代か前の先祖がユダヤから来たのか、それとも本人が渡航してきたのか、気になるところであるが、マスコミの記事では、それは分からない。

② サンダース氏がユダヤ人であり、民主党予備選挙に立候補したのであれば、米国在住のユダヤ人は彼を応援したのだろうか。それとも、かねてイスラエル現地政府の占領政策に批判的であったと伝えられているところをみると、逆に在米ユダヤ人の支持を得られなかったのかも知れない。

③ しかし、知名度の高いヒラリー・クリントン女史を相手に善戦しているところを見れば、ユダヤ人社会の支援を受けていたのかも知れない。新聞の記事では、そこまでは分からない。いずれにしても、アメリカにおけるユダヤ人社会は複雑怪奇で、われわれ素人の考えでは遠く及ばないところがあるようだ。

④ 立山氏の解説によれば、米国内のユダヤ人社会にも世代による意見の違いがあり、またイスラエル現地政府の施策にも賛否両論あり、大揺れに揺れているのが実情で、落ち着く先は今しばらく様子をみなければならないのだろう。

ramtha / 2016年7月28日