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九月十五日 「『文』の語源は何?」

「文」の字からは「文字」とか「文章」とかが、まず連想されるが、「人文」・「天文」・「文衣」・「文身」などの熟語があるところを見ると、はて、「文」の語源は何だろうと疑問になってくる。そこで白河先生の「字統」に尋ねて見ると、そこでは、次のように説明されている。

文(ブン・モン=文身・あや・もよう・かざる・ふみ)の甲骨文字や金文文字の表現は、人の正面形の胸部に、文身の文様を加えた形の象形文字という。聖化のために朱などを加える文身と言う。字の全体は「大」と同じく人の正面形であるが、「大」に比べて胸郭の部分を広くしている。甲骨・金文の字形では、その部分にX印や心字形の文様を加えている。「文」は祭事に文祖・文考・文母のように先人に冠して言う語で、文とは死者のいわば聖記号である。死葬の時、朱をもって胸にその絵身を加えて屍体を聖化し、祀るときには、文を冠して読んだ。婦人のときは、両乳をモチーフとして加えるので、爽(ソウ)爽(セキ)・爾(ジ)は、みなそれを示す字である。

死葬のときのみでなく、たとえば出生のとき、X形の文飾をひたい(厂)に加えて呪禁(まじない)とするものが產(産)、その字の上部は文である。また成人式に文を加えた字は、彥(彦)、成人のとき、その文飾を加えて廟にお参りするときの姿を顏(顔)という。
これらのことから言えば、文身は加入式の儀礼とき、その聖化の方法として加えれるもので文字が成立したころ、殷にもその習俗があり、貴顕のものより一般の人に及ぶまで、一様に行なわれたと考えられる。

凶礼のときにも胸にX形を加えて呪禁とすることがあり、凶・兇・匈・恟・胸などは、その系列の字である。

これを見て、教えられたこと、考えさせられたことなどを、思いつくまま書き留める。

① 「文」は、「ふみ」とも「あや」とも訓(よ)まれる理由が、実はその字源が「あや(模様)」にあることを初めて知った。

② 医学、科学の未発達な大昔は、原因不明の病や事故などは全て悪霊(アクリョウ=祟りをする死霊。もののけ)の仕業と考え、何か大事な行事のときは、お祓いをしていたのだろう。文身(刺青)は、その一つであったものと思われる。

③ 刺青(いれずみ)と言えば、今日では「やくざ」など、あまり良からぬ者がその力を誇示するものと考えられるが、その始めは、お祓いのような聖化の儀礼であったということらしい。なおこうした時の文身は、その時だけ描いた絵であったものではないかと思われる。

④ 広辞苑の「刺青」では、次のように説明されている。

【いれずみ「入れ墨」】
①肌に文字・絵画などをほりつけること。また、そのもの。針や刃状の道具で皮膚を傷つけ墨・朱・ペンガラ・カルミン・インジゴなどの色料を刺し入れて着色する。先史時代から行なわれ、日本では近世にも流行。鳶などの職人や遊侠の徒の間に行なわれた。彫物。我慢。文身。刺青。
②五刑の一つ。顔または腕に墨汁を刺し入れて前科のしるしとしたもの。江戸時代には庶民の窃盗罪に対し、単独または追放・敲(たたき)に付加して行なわれた。

これによると。遊侠の徒(やくざ)の流行となったり刑罰の一つとされてから、印象の悪い行為となったことが窺われる。
⑤ 日本では悪印象が広く伝わったせいか、一般の人には見られないが、アメリカ大リーグの選手などには刺青をしている者が、しばしば見られるようだが、その他の一般社会人ではどうなんだろう。

⑥ アフリカの現地人には時に見かけるが、ヨーロッパでは聞かないようだが、どうだろう。

⑦ そういえば、テレビドラマでお馴染みの遠山の金さんこと江戸町奉行遠山金四郎は、ドラマのクライマックスに、腕を捲って刺青を差し出すところが見せ場だが、事実はどうだったのだろう。

ramtha / 2016年10月4日