日本体育・学校健康センターによる全国の小学生・中学生・高校生における負傷・骨折発生率の年次推移を見ると,この30年間で骨折率は約2倍,負傷率は約2.5倍に増加しているとのことです。骨折の三大因子は、遺伝、運動、食生活とされ、運動の面では歩行の減少が、食生活の面ではカルシウム不足が問題とされています。
宇宙飛行士の骨密度が宇宙からの帰還直後に低下することが知られているように,無重力で骨に負荷がかからないと骨量が低下し,運動を行うと骨に負荷がかかり骨量は増加します。
骨に負荷をかける運動として最も適しているのは歩行であると言われていますが、近年,子どもの歩行量は明らかに減少しています。調査によると、子どもの1日の歩数は1979年では2万7,600歩であったのが、1987年には1万8,900歩,1997年では1万3,000歩足らずと,10年単位で激減しています。特に中学生では1万歩前後にまで落ち込んでいます。これは、TVゲームをするなど、戸外での遊びが減った事と、受験勉強などが要因とされています。
歩かなくなることは骨量の減少の問題だけでなく、身体機能全般に影響をもたらしていると考えられますので、留意しなければならない問題です。
食生活面ではカルシウム不足が挙げられていますが、戦前の日本人のカルシウム摂取量は200~400mg/日でありながら骨が丈夫で、現代日本人の平均摂取量は540mg/日ですが骨は弱くなっています。これは不思議な事です。もちろん骨の強度にはカルシウムだけでなく、蛋白質やビタミンDなどの要素もありますから一概には言えませんが、カルシウムの摂取の仕方にも問題があるのではないかと考えます。例えば牛乳によるカルシウム摂取は、乳糖分解酵素のない成人(日本人の80%)は吸収できないと言われる研究者もおられるからです。
もう一つの問題は肉食や肉加工品(ハム・ソーセージ)、インスタント食品などの摂取が増えた事です。これらはカルシウムに比べてリンの比率の高い食品です。人間の身体は、血液中のリンとカルシウムの比率を1:1程度に保つことが優先事項ですので、リンの多い食品を摂ると、骨や歯からカルシウムを溶かしだして中和しようとします。この為、骨や歯が弱化して行きます。
一般的に骨量が少ないと牛乳を飲んだり、カルシウム製剤を飲むなどの対策をとりますが、上記の理由から歩行をするなど、継続的に骨に負荷を与える運動をすること、食生活全般を見直すことが大切です。そしてそのことが骨量だけでなく、生活習慣病も予防し、質の高い生活を送る事にもなると考えます。
参考図書 新谷弘実著 「胃腸は語る」 弘文堂刊
丸元淑生著 「図解 豊かさの栄養学」 新潮文庫刊
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ramtha / 2005年12月31日