中年以降の女性に多いのが膝関節の痛みです。正座ができなかったり、階段の上り下りが辛かったりと言う症状で医療機関を受診すると、「軟骨がすり減っていますね」「関節が変形しています。」「半月板が欠けています」などと言われます。
「ヒアルロン酸」「グルコサミン」「コラーゲン」などで軟骨の成分を補うと、膝の痛みが楽になるようなイメージのCMをご覧になった方は多いでしょう。しかし、はたして軟骨の成分を補って、膝の痛みは楽になるのでしょうか?実は関節の軟骨には神経線維がありませんので、軟骨が多少減った所で、痛みを感じるはずがないのです。膝に痛みを感じさせているのは、大腿部やふくらはぎなどにある筋に生じたトリガーポイントです。
痛みがない無症状の膝関節を調査した研究でも、膝関節の変形や半月板の損傷が見られす。日本整形外科雑誌第76号によりますと、「60歳以上では41.7%に断裂を示すgrade3を認めた」とあります。このことからも、痛みの原因が関節の変形や半月板の損傷ではないのではないかと示唆されています。
膝の痛みでよくみられるのが、膝の内側の痛みです。下図は膝の内側に痛みを感じさせる代表的な筋である、「内側広筋(左図)」と「大内転筋(右図)」です。このように大腿部の筋はいかにも膝関節が悪くなったよう痛みを感じさせます。図の×印にあるトリガーポイントが膝に痛みを感じさせますので、このトリガーポイントを弛めないと膝の痛みは消えません。
大腿部の前面にあります大腿四頭筋(大腿直筋・外側広筋・中間広筋・内側広筋)は、膝の痛みに関与し、膝周囲では前面や側面に痛みを感じさせますが、大腿部後面のハムストリング筋および下腿のヒラメ筋、腓腹筋は、膝の裏側周囲で痛みを感じさせます。
階段の昇り降りをするときなどに、突然カクッと力が抜けてしまう現象を「膝折れ」と言いますが、この現象は大腿四頭筋のトリガーポイントが起こさせます。大腿四頭筋のトリガーポイントは日頃は気づくことが出来ませんが、治療院などで押圧されると思いがけず強い痛みを感じます。幼少時からトリガーポイントがみられる代表的な筋群で、膝の痛みや膝折れ現象が生じたときは、必ずチェックしなければならない筋です。
膝に痛みを感じるようになると、階段を昇ったり降りたりする動作が不自由になります。駅の階段などで、一歩ずつ昇ったり、降りたりされている方をよく見かけますが、このようにかなりつらい症状でも、身体のバランス調整を行い、痛みに関与しているトリガーポイントを弛めると、短期間で元のように不便無く階段の昇り降りが出来るようになります。
階段を昇るときに痛みが出るような場合⇒中間広筋
階段を降りるときに痛みが出るような場合⇒大腿直筋・膝窩筋
(中間広筋) (膝窩筋)
【イラスト図出典:『Myofascial pain and Dysfunction The Trigger Point Manual』 より引用】
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